母が夕食でスプーンを取り落とすようになった日のこと
要介護3になって2年と少し。母が夕食のスプーンをカチンと皿に落とした。
最初は「疲れただけ」と思っていた。次の日も、その次の日も、同じことが起きた。
左半身に麻痺があるから利き手は右で食べているけれど、手首をひねる動きが弱ってきていた。普通の金属スプーンが重く感じるらしい。
ケアマネさんに相談したら「介護用のスプーンに替えてみたら」と言われた。それで通販で1本目を買った。あとから3本買い足すことになるとは思わなかった。
介護用スプーンは介護保険の対象外。自費で買うものだから、最初の1本で失敗するとそのまま使わずに引き出しにしまうことになる。
📖 この記事でわかること
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介護用スプーンは介護保険の対象外。1本1,000〜1,500円の自費購入になる
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「握りやすさ」「口に入れやすさ」「本人がまだできる動きを残す」の3軸で選ぶと失敗が減る
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兼用タイプ・指導用チタン・サイズ違いで使い分けると食べる量が戻ってきた
最初に買ったスプーンで失敗した話
最初はネット通販で安い介護用スプーンを2本セットで買った。柄が太くて握りやすそう、というだけの理由だった。
届いて使わせてみたら、母が「重い」と言った。柄の中まで金属が詰まっていて、見た目より持ち重りした。
ひと口目は使ったが、2口目のあとで母がまたカチンと落とした。
その時に気づいたのは、「握りやすさ」だけで選んだのが間違いだったということ。母にとっての問題は、握ること自体じゃなくて、すくった先を口まで運ぶときに手首をひねる動作だった。手首が疲れる重量だと、結局途中で取り落とす。
それで、軽くて、首の角度を自分で曲げられるタイプを探し直すことになった。
《2年後の自分への備忘録》
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「太い柄=高齢者向け」と短絡しない。重量と一緒に判断する
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母の場合は「握る力」より「手首をひねって口に運ぶ動き」が弱っていた
兼用タイプの「2N-3」を試した経緯
買い直しで選んだのが 斉藤工業 オールステンレスハンドル 2N-3 平形スポンジ付(兼用 大)。スプーンとフォークの兼用形で、先端が平たく、横の縁が少し立ち上がっている。
選んだ理由は3つあった。
ひとつは、ステンレスの柄を自分の手で曲げられること。母の手首の角度に合わせて少しだけ内側に曲げると、口まで運ぶ距離が短くなる。
ふたつめは、平形スポンジが柄に付いていること。グリップ部分にスポンジが巻かれているから、強く握らなくても滑らない。
みっつめは、先端が平たいので、すくいきれずに残ったご飯を皿の縁で寄せやすかったこと。これは買ったあとに気づいた発見だった。
基本情報
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価格:¥1,250(2026-05-04時点)
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特徴:オールステンレス柄を自分で曲げられる/平形スポンジハンドル付き
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用途:スプーン・フォーク兼用(大)
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介護保険:対象外(自費購入)
使い始めて2週間で、夕食の取り落としが減った。完全になくなったわけじゃない。でも、1食につき2回落としていたのが、3日に1回くらいまで落ち着いた。
家族の反応は静かだった。母自身は「軽くなった」とだけ言った。それで十分だった。
よかった点:
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2週間使って手首が疲れにくくなったらしい
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柄の角度を一度曲げたら、その状態で2か月以上ヘタっていない
気になった点:
- 兼用形なので、すくう深さが浅い。汁気の多いおかずだとこぼしやすい
汁物は別のスプーンを使うことにした。同じ家でも料理によって道具を変えると、本人ができることが少し残せる気がする。
ケアマネさんからは「無理に1本で済ませなくていい」と言われていたから、その通りにした。
斉藤工業 オールステンレスハンドル 2N-3 平形スポンジ付 兼用 大
《2年後の自分への備忘録》
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兼用タイプは「すくう+刺す」で1本2役。汁物以外なら主役にできる
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柄を曲げて口に運ぶ角度を調整できると、手首の疲れがかなり減る
チタン製の摂食指導用スプーンを足した経緯
母の認知症が進んできた時期に、訪問看護師さんから「飲み込む力も少し落ちてきてますね」と言われた。
その時に紹介されたのが、SUDチタン摂食指導用スプーンだった。先端が薄くて小さく、口に入れる量を抑えられるタイプ。
正直、最初は「離乳食用なんじゃ」と疑った。看護師さんに聞くと、「飲み込みそこねて咳き込みやすくなった人にも、ひと口の量を減らす目的で使う」と教えてくれた。
実際に届いてみると、本当に小さい。先端の幅は親指の爪より少し広いくらい。13gで軽い。
基本情報
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価格:¥1,100(2026-05-04時点)
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サイズ:幅23×長さ147mm/重さ13g
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材質:チタン(金属臭・アレルギーが出にくい)/日本製(燕三条)
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介護保険:対象外(自費購入)
最初は母が「子ども用みたい」と渋った。それでも「ひと口を小さくする練習に」と説明したら、夕食のおかずだけ使ってくれるようになった。
使ってみてわかったのは、量が小さいとむせる回数が減るということ。むせやすくなった日は、これ1本で食べる時間は伸びるけど、咳き込まずに食べきれる日が多くなった。
逆にご飯のような量を食べる主食には向かなかった。1食すべてこれにすると母が疲れるので、おかずだけ。
よかった点:
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チタンで金属臭が出ない。母が「冷たい味がしない」と言った
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先端が薄いので、唇のすき間に入れやすい
気になった点:
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量を取れないので、主食をこれだけで食べると時間がかかりすぎる
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子ども用と思われやすい見た目なので、本人の納得感が必要
これは「むせやすくなった食事の時だけ出す予備」という位置づけで使っている。普段は食洗機で洗って引き出しにしまっておく道具。
SUDチタン摂食指導用スプーン
《2年後の自分への備忘録》
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ひと口の量を意図的に小さくしたい時だけ出す。常用ではない
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主食用と分けると、母が疲れない
主食用にもう1本足したスプーンの話
おかずは2N-3、むせやすい日はチタンスプーン、と分けた結果、主食用が中途半端になった。
それで3本目に斉藤工業 オールステンレスハンドル スプーン 大 2N-1を選んだ。
これは兼用形ではなく、すくう面が深い純粋なスプーン。サイズも長さ20.1cm・約46gと、2N-3より少し大きくて重い。
最初は「重いと取り落とすんじゃ」と心配したけれど、深さがあるぶんご飯やシチューを一度に運べるので、結果的に手の往復回数が減って疲れにくいと母が言った。
「軽い=楽」とは限らないと、この時に気づいた。
基本情報
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価格:¥1,310(2026-05-04時点)
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サイズ:長さ約20.1cm/重さ約46g
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材質:金属部 XM-7ステンレス/スポンジ部 EPDMゴム
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介護保険:対象外(自費購入)
使い始めて1か月経った。
よかった点:
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主食をすくう量がしっかり取れて、食事時間が短くなった
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柄を曲げる構造は同じなので、母の手首角度に合わせ直しが効く
気になった点:
- 重量があるので、疲れている日は2N-3に戻す必要がある
3本を「主食用・おかず用・むせやすい日用」と用途で分けて、引き出しの一番上の段にまとめて置いている。ケアマネさんに「使い分けてます」と伝えたら、「それでいい」と言われた。
ちなみに福祉用具専門相談員さんからは、「介護用スプーンは保険対象外なのでケアプランには載せられないけれど、食事介助の中で本人ができる動きを残す道具として大事」とも言われた。要介護度に関係なく、自費で揃えるしかない領域。
斉藤工業 オールステンレスハンドル スプーン 大 2N-1
《2年後の自分への備忘録》
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軽さだけで選ぶと、深さ不足で食事時間が伸びることがある
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主食用は深さ重視、おかず用は曲げ角度重視で分けるとラク
失敗しないために知っておきたかった3つの軸
3本買ってわかったのは、最初に整理しておけば良かった判断軸が3つあるということ。
ひとつは「握る力」と「手首をひねる力」を分けて見ること。握れていても手首が弱っていたら、軽くて柄を曲げられるタイプを優先する。
ふたつめは「すくう量」と「口に運ぶ量」を分けて考えること。深いほうが少ない往復で食べられる人もいれば、ひと口ずつ小さく運ぶほうがむせない人もいる。
みっつめは「1本で済ませようとしないこと」。料理ごとに使い分けると、本人ができることが残せる。同じ家で3本使うのは贅沢じゃなく、合理だった。
介護用スプーンは「正解の1本」を探すより、「使い分ける数本」を揃えるほうが結果的に安く上がる。
《2年後の自分への備忘録》
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軸を整理せず買うと、最初の1本目が引き出しで眠る
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食事介助は道具より「本人がまだできる動き」が中心。道具はそれを支える
3本を使い分けるようになって今思うこと
夕食でスプーンを取り落とした最初の日から、半年が経った。
完全に取り落とさなくなったわけじゃない。疲れた日は今も1食に1回くらい落とす。
でも、母が「自分で食べる」と言う日は減らずに済んでいる。介助はするけれど、最後のひと口まで本人が運ぶ場面が残っている。それが続いているのは、たぶんスプーンを3本に分けたおかげだと思う。
派手な改善じゃない。地味に効く道具。3本合わせても4,000円弱で揃った。介護保険の対象外だから自費だけれど、使ってみてダメなら次に変えればいい、と思える価格帯ではある。
ケアマネさんと訪問看護師さんに、ふだんの食事の様子をひと言ずつ伝えておくと、合いそうな道具を教えてもらえることもあった。専門家じゃないから自分で判断しきれないところは、相談先を持っておくと迷わずに済む。
❓ よくある質問
介護用スプーンは介護保険でレンタルや購入補助の対象になりますか?
介護用スプーンは介護保険の対象外で、レンタルにも特定福祉用具販売にも入っていません。すべて自費購入になります。要介護度に関係なく、家庭で揃える消耗品の扱いです。
1本目はどんなタイプを選ぶと失敗しにくいですか?
「握る力」と「手首をひねる力」のどちらが弱っているかでまず分かれます。手首が弱っていそうなら、柄を自分で曲げられる軽量タイプ(例:1,200〜1,500円帯のオールステンレス+スポンジ柄)が無難です。迷ったらケアマネジャーや訪問看護師に食事の様子を伝えると、合いそうなタイプを教えてもらえます。
兼用タイプとスプーン専用、どちらがいいですか?
用途で分けるのが安全です。兼用タイプは1本で済むぶん便利ですが、すくう深さが浅く汁物に弱い傾向があります。主食やシチューを多く食べる人は、深さのあるスプーン専用タイプを別に1本足すと食事時間が短くなります。
飲み込みそこねて咳き込みやすくなった人にはどう選びますか?
ひと口の量を物理的に減らせる、先端が薄く小さい摂食指導用スプーンが選択肢に入ります。チタン製のものは金属臭が出にくく軽量です。ただし主食を全部これで食べると時間がかかるので、むせやすい食事の時だけ使う想定で選ぶといいと思います。
まとめ|「正解の1本」より「使い分ける数本」
今回の介護用スプーン選びで気づいたことを、次の自分が楽できるように残しておく。
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握る力と手首をひねる力は分けて見る。手首が弱っているなら軽量+柄が曲がるタイプ
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すくう深さで食事時間が変わる。主食用は深め、おかずは兼用形が合うこともある
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むせやすくなった時用に、先端が小さい摂食指導用スプーンを1本足しておくと安心
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介護保険の対象外なので自費購入。1本1,000〜1,500円で済むので試して合わなければ次に回せる
📚 この記事で参考にした公的情報
※ この記事は在宅介護3年目の家族による実体験ベースの記録です。医療・介護の専門資格は保有していません。介護保険適用の最新情報や個別の判断は、お住まいの地域包括支援センター・ケアマネジャー・主治医にご確認ください。最終更新:2026年5月



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