嚥下訓練食は介護保険で買えるのか|母の食卓に揃えた4つの道具

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母の食事の時間が30分を超えるようになった

朝食の食卓に並ぶパンと卵と牛乳

ゴールデンウィーク明けの夕方、母がスプーンを持ったまま動かなくなった。口の中に食べ物が残ったままで、何度か飲み込もうとして、最後はむせ込んだ。

要介護3になって2年。脳梗塞のあとも、食事だけは自分のペースで楽しめていたつもりだった。

「飲み込む力が落ちてきていますね」とケアマネジャーに言われたのが先月のこと。訪問看護師さんからも「やわらかいものに切り替えた方がいい」と言われた。

それで、嚥下訓練食について調べ始めた。検索すると「介護保険で買える」「介護用食品」と並んでいて、どこまで保険が効くのかが分からない。

これから飲み込みが落ちてくる家族を看る人に向けて、わたしが集めた道具と、その時に確認した制度のことを残しておきたい。

嚥下訓練食そのものは介護保険の対象外。でも、飲み込みの評価と訓練は介護保険のサービスで受けられる

📖 この記事でわかること

  • 嚥下訓練食・介護用食器・口腔ケア機器は基本的に介護保険の対象外(自費購入)

  • 一方で「飲み込みの評価・訓練」は訪問看護や訪問リハビリの枠でケアプランに組み込める

  • 食事に30分以上かかる・むせ込みが増えたら、まずケアマネさんへ相談するのが先

嚥下訓練食は介護保険で買えるのか

嚥下の写真

最初に整理しておきたいのが、介護保険の対象になるものと、ならないものの線引き。

介護保険で「物」にお金が出るのは、車椅子・介護ベッド・ポータブルトイレなどの福祉用具のレンタル/購入だけ。食品そのものや、食事用の食器類はこの枠に入らない。市販の「やわらか食」「ムース食」「ゼリー食」を買っても、レシートが介護保険で戻ってくることはない。

ここはわたしも最初に勘違いしたところで、介護用品店に並んでいるからつい保険が効きそうな気がする。

ただ、ケアマネさんに相談すると、別のルートが見えてくる。

うちの場合は、訪問看護の枠で看護師さんが定期的に食事の様子を見てくれるようになった。言語聴覚士さんが入る訪問リハビリを使えば、本格的な飲み込みの訓練もケアプランの中に組み込めるらしい。

「物(食品・食器)は自費。でも、飲み込みの評価と訓練は介護保険のサービスで見てもらえる場合があります」

ケアマネさんがこう整理してくれて、ようやく頭の中が片付いた。買う前にまずケアマネさんに相談、これだけはおすすめできる。

《2年後の自分への備忘録》

  • 嚥下訓練食・介護用食器・口腔ケア機器は基本「介護保険の対象外=自費」

  • 飲み込みの評価・訓練は訪問看護や訪問リハビリのサービスで保険適用になる場合がある

  • 自分で判断せずケアマネさんに相談してから買うと無駄が減る

やわらかいデザートで母が「美味しい」と言った日

在宅介護の写真

最初に試したのが、ふくなおのやわらかデザート チーズ屋さんのレアチーズケーキ

「嚥下訓練食」とそのまま検索して上位に出てきた。栄養士さんが「UDF区分3『舌でつぶせる』を目安に選んでください」と言っていて、これがちょうど区分3に該当していた。

業務用と書いてあったから施設向けかと思ったけれど、家庭でも普通に買えた。

基本情報

  • 価格:¥2,160(2026-05-06時点)

  • 内容量:約40g×1個(プレーン以外にいちご・抹茶・バナナ)

  • UDF区分3「舌でつぶせる」

  • 1個で100kcal前後とれる栄養補助の側面もあり

  • 介護保険:対象外(食品なので自費)

冷凍で届いた。冷蔵庫で半日解凍してから、夕食後のデザートに出した。

母はもともと甘いものが好きで、入院前はよくチーズケーキを買って帰っていた。それを覚えていたみたいで、ひとくち口にしたあと「美味しいね」と言った。

ここ最近、食事中に「美味しい」が出ることがほとんど無くなっていた。その一言だけで、買って良かったと思った。

スプーンですくえる柔らかさだけど、ちゃんとチーズケーキの味がする。母も自分のペースでゆっくり食べきった。

最初の失敗は、解凍を急いで電子レンジを使ったこと。一部分だけ温まりすぎて、口当たりがバラついた。それ以降は前日の夜に冷蔵庫へ移すルーティンに落ち着いた。

よかった点:

  • 1個あたり100kcal以上あって、食が細い母の補食になる

  • 4種類のフレーバーで飽きが来ない

  • UDF区分3表記なので、噛む力が落ちている状態でも判断しやすい

気になった点:

  • 1個2,160円は正直高い(毎日は出せない値段)

  • 冷凍庫のスペースを取る

毎食の主食にするにはコストが厳しい。けれど「久しぶりに美味しいものを食べてもらいたい日」の選択肢としては地味に効いた。週末や、訪問看護師さんが来る日のおやつに合わせて出すようにしている。

UDF区分の数字は、本人の状態を栄養士さんかケアマネさんに伝えてから選んだ方が安全。区分を間違えると、せっかく買っても食べられないことがある。

やわらかデザート チーズ屋さんのレアチーズケーキ(ふくなお)

やわらかデザート チーズ屋さんのレアチーズケーキ(ふくなお)

《2年後の自分への備忘録》

  • UDF区分3=舌でつぶせる柔らかさ

  • 解凍は冷蔵庫で前日からゆっくり戻す

  • 主食には高い。「特別な日」用にすると気持ちが続く

一口量を1〜2gに抑えるスプーン

食事の道具も見直した方がいいと言われた。母が口に入れる量が多くなりすぎていて、それがむせ込みの一因になっていたらしい。

栄養士さんに勧められて買ったのが、青芳のKスプーン。一口量が1〜2gに収まるよう、すくう部分が小さく、薄く、平たく作られている。

基本情報

  • 価格:¥1,573(2026-05-06時点)

  • 摂食・嚥下障害のある人向けに設計

  • すくう部分が小さく、薄く、平たい

  • 1,500円台で試せる価格

  • 介護保険:対象外(食器なので自費)

最初に使った日、母が小さく口を開けるだけでスプーンが入った。今までは大きいスプーンで一気に運んでいたから、本人もその方がラクだったんだと思う。

スプーンの形が口の中で扱いやすいのか、母も食べこぼしが減った。

ただし、ひと口あたりの量が小さい分、食事に時間がかかる。最初の数回は「食べきれない」と母がスプーンを置いた。短時間で量を入れることはできない道具だから、そこは家族が腹をくくる必要がある。

よかった点:

  • 一口量が物理的に多くなりすぎない

  • 軽くて、自分で持ちたい母にも扱いやすい

  • 1,500円台で試せる(合わなくても痛手が小さい)

気になった点:

  • 量を入れたい人には向かない(時間がかかる)

  • 柄がやや短く、介助者が使うには持ちにくい場面もある

「ひと口を小さくする」というのは、噛む力や飲み込む力に合わせて自然に減速する仕組みだった。最初に1本買って、合うようなら追加するくらいでいい気がする。

Kスプーン 青芳(食事介助・摂食訓練用スプーン)

Kスプーン 青芳(食事介助・摂食訓練用スプーン)

《2年後の自分への備忘録》

  • 一口量を物理的に小さくするだけで、むせ込みが減ることがある

  • 量を入れたい人には向かないので、本人の食欲と相談

  • 1,500円台で試せるので、合うか合わないかの試金石にしやすい

顎が上がらない有田焼カップを試した話

スプーンの次に困ったのが飲み物だった。母は普通のマグカップで麦茶を飲もうとすると、最後の一口で必ず顎を上げてしまう。その瞬間にむせる。

訪問看護師さんから「飲み口が広がっているコップに替えるだけで違うことがありますよ」と言われた。それで探したのが、ヤマトクのスワローカップ。有田焼の陶器でできていて、飲み口がぐっと広がっている。

基本情報

  • 価格:¥4,840(2026-05-06時点)

  • サイズ:飲み口径8.5×高さ10cm/容量180mL/重さ290g

  • 材質:陶器(日本製・有田焼)

  • 食洗機・電子レンジ対応

  • 介護保険:対象外(食器なので自費)

届いたとき、想像より小ぶりだった。容量は180mLなので、湯のみよりやや大きいくらい。

実際に使ってみると、飲み口が広がっているおかげで、最後の一滴を飲むときに顎を上げなくていい。母が首を傾けずに飲み切れた。本人もこれは楽なのか、自分から手に取るようになった。

ただ、290gと意外に重い。最近では母が片手で持ち上げるのに少しふらつくことがある。両手で持ってもらうか、テーブルに置いたまま飲む形に切り替えた。

それと、4,840円は介護用食器としては安くはない。プラスチックの嚥下用カップなら1,000円台からあるけれど、母は陶器の方が「ちゃんとした器で飲んでいる感じがする」と言う。気持ちの面でこっちを選んだ。

よかった点:

  • 顎を上げずに飲み切れる形状

  • 陶器なので食卓に出した時の見た目が普通

  • 食洗機・電子レンジ対応で扱いがラク

気になった点:

  • 重さ290gは握力の弱い人だと厳しい

  • 価格は4,000円台で、合わなかったときの痛手は大きい

握力に余裕がある人なら陶器、力が弱い人ならプラスチック製の軽い嚥下カップ、と本人に合わせて選んだ方がいい。これは買う前に握力を一度確認しておけばよかったと思う。

スワローカップ AMX 有田焼(介護用カップ・ヤマトク)

スワローカップ AMX 有田焼(介護用カップ・ヤマトク)

《2年後の自分への備忘録》

  • 顎が上がらないコップは、最後の一口でむせる人に効くことがある

  • 陶器か樹脂かは握力で選ぶ

  • 価格が4,000円台なので、可能なら訪問看護師さんに使い方を見てもらってから買う

食事の前にする口の運動

高齢者 食事の写真

道具で食卓を整えても、本人の口の動きそのものが衰えれば意味がない。訪問看護師さんが「食事の前に5分でいいから、口を動かす時間を作ってください」と言っていたのが頭に残った。

家でできる範囲の口腔ケアグッズを探して、タノシニア取扱いのNEWエントレ 口腔ケアトレーニング機器を試してみることにした。

基本情報

  • 価格:¥5,060(2026-05-06時点)

  • 摂食・嚥下・鼻呼吸のトレーニング向け器具

  • 口腔ケアと食前リハビリの両方で使える

  • 言語聴覚士の指導つきで使うことを想定

  • 介護保険:対象外(一般消費者向けトレーニング器具なので自費)

商品が届いてまずやったのが、訪問看護師さんに「これを使っても大丈夫かどうか」を聞くこと。本人の状態によっては合わない器具もある、と言われていた。

幸い、母の場合は問題ないとのことで、夕食前の5分を「口を動かす時間」にした。本人は最初は照れていたけれど、看護師さんが来た日に一緒にやってくれたら、機嫌よく続けてくれるようになった。

効果のほどは、わたしには正直よく分からない。口の動きが目に見えて改善したというより、「食前に口を動かす習慣がついた」こと自体が良かったのかもしれない。

ひやひやしたのは、最初に使い方を間違えそうになったこと。商品に簡単な説明はあるけれど、本人の状態に合った使い方は専門職に聞かないと分からない。これは買って渡せば終わり、というものではない。

よかった点:

  • 食前の5分を「口を動かす時間」として固定できた

  • 訪問看護師さんとの会話のきっかけになった

  • 鼻呼吸の練習にも使える

気になった点:

  • 5,000円台でやや高い

  • 専門職の指導なしで使うのは難しい

買う前にケアマネさんか訪問看護師さんに「この器具を使ってもいいか」を聞くのが先。素人判断で本人の状態に合わない器具を使うと、かえって食事を嫌がる原因になる。ここは順番を間違えたくないところだと思う。

NEWエントレ 口腔ケアトレーニング機器 K22-1(タノシニア)

NEWエントレ 口腔ケアトレーニング機器 K22-1(タノシニア)

《2年後の自分への備忘録》

  • 食前に口を動かす5分を作るだけでも、食事のリズムが変わる

  • 一般家庭で買える器具だが、使い方は訪問看護師さんに教わるのが安全

  • 効果よりも「習慣」が積み上がる方が大きい印象

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食卓に残ってもらうために集めた道具

高齢者 食事の写真

ここまで4つ並べて気づいたのは、「嚥下訓練食」と検索したときに本当に探していたのは、食品そのものじゃなかったこと。

母が食事の時間を嫌いにならないために、何をどう揃えるか。それを家族の側でも整理する必要があった。

項目 やわらかチーズケーキ Kスプーン スワローカップ 口腔ケア器具
価格 ¥2,160 ¥1,573 ¥4,840 ¥5,060
用途 補食・嚥下訓練食 一口量を抑える 顎を上げず飲む 食前の口運動
介護保険 対象外 対象外 対象外 対象外
試しやすさ 中(冷凍庫を使う) 高(1,500円台) 中(重さに注意) 低(要相談)

道具は介護保険の対象外でも、評価と訓練のサービスは保険で受けられる。買うより先に、ケアマネさんに「飲み込みの様子を見てほしい」と伝えるのが、わたしが今一番やってよかったと思う一手。

派手さはないけれど、母が食卓に残ってくれる時間が、また少し延びた気がする。

❓ よくある質問

嚥下訓練食は介護保険でレンタルや購入ができますか?

できません。食品そのものは介護保険の福祉用具にも特定福祉用具にも該当しないため、自費購入になります。ただし、訪問看護や訪問リハビリで言語聴覚士・看護師から飲み込みの評価や訓練を受けるサービスは、ケアプランに組み込めば介護保険の対象になる場合があります。

介護用スプーンやカップは介護保険で買えますか?

食器類は介護保険の対象外で、自費購入になります。1,500円前後のスプーンから5,000円前後の陶器カップまで価格帯が広いので、本人の状態に合うかが心配なら、まず安価なものから試すのがおすすめです。

UDF区分は何を見ればいいですか?

ユニバーサルデザインフードのパッケージに区分1〜4の表示があり、数字が大きいほど柔らかくなります。区分3は「舌でつぶせる」、区分4は「かまなくてよい」が目安です。本人の噛む力と飲み込む力は別々に評価する必要があるので、栄養士さんかケアマネさんに本人の状態を伝えてから選んだ方が安全です。

食事に時間がかかるようになったら、まず何をすればいいですか?

ケアマネジャーに「飲み込みの様子を見てほしい」と相談するのが最初の一手です。訪問看護や訪問リハビリのサービスを検討してもらえます。道具を揃えるのはそのあとで十分間に合います。

口腔ケアトレーニング器具は素人が使っても大丈夫ですか?

商品にもよりますが、本人の状態に合わない使い方をすると食事を嫌がる原因になることがあります。買う前にケアマネさんか訪問看護師さんに使ってもいいかを確認し、可能であれば最初の数回は専門職と一緒にやってもらうのが安全です。

まとめ|嚥下訓練食は自費。でも訓練は保険で受けられる

今回の食卓まわりの見直しで気づいたことを、次の自分が楽できるように残しておく。

  • 食品・食器・口腔ケア器具はどれも介護保険の対象外=自費購入

  • 「飲み込みの評価と訓練」のサービスは介護保険の枠で使える可能性がある

  • 1,500円のスプーンから始めると失敗の痛手が小さい

  • 道具を揃える前に、ケアマネさんに飲み込みの様子を見てもらう順番が一番ラク

📚 この記事で参考にした公的情報

※ この記事は在宅介護3年目の家族による実体験ベースの記録です。医療・介護の専門資格は保有していません。介護保険適用の最新情報や個別の判断は、お住まいの地域包括支援センター・ケアマネジャー・主治医にご確認ください。最終更新:2026年5月

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